夢流し

辺りはあまりに静かでも、頭の中はどんちゃん騒ぎ。京都の地に独り暮らし、苦節の学部生生活を送る京都大学生のブログ。文化、言語、娯楽、心理、生活等に関して、大学における教養科目の講義で得た知識を再解釈および適用し、その知を広く社会に還元することを目指す。

『いぬのえいが』を見ました

今朝起きて何か見るような番組ないかなとチャンネルを替えていたら、テレビ大阪で『いぬのえいが』の放送が始まるところで手が止まりました。『いぬのえいが』…私は基本動物ものの番組とか映画は好きじゃないんですが、これに関しては以前から見たかったのです。テレビ大阪はこういう番組を思い出したように放送してくれるからいいですね、以前にも『パコと魔法の絵本』を放送していた気がする。京都じゃ受信できないから知らなかったけど、できるなら録画したかったなあ。そんなわけで、二時間の間じっと見ていました。
11の短編からなっており、そのうちいくつかは野良犬ポチを中心、あるいはきっかけとする物語。その話とクライマックスを憶えていたのは、調べてみると読売テレビで「特別編」というものがやっていたからだそうです。2004年公開、もう八年も前の作品なのに、古さを全く感じさせません。役者と犬はもちろん、演出において監督が本当にいい仕事をしてるとはっきりわかりました。どの作品も良かったけど、バウリンガルの裏話という設定の『犬語』なんて笑っちゃったなあ。『A Dog's Life』はアニメとしての見せ方が良かったのです、後半の部が再生産される画一的な犬(?)とのアイロニーな対比がしみじみとね。そこからさらにクライマックスの『ねぇ、マリモ』ですよ、この部分は特にはっきりと記憶しているところで、終わり方なんかもちゃんと見えているはずなのに、なんかすごい目頭に込み上げてきました。音楽がS.E.N.S.なのは反則ですよ!しかしここで私を泣かせないものは、家族の面前で男の自分が涙を見せてはいけないという、日本の伝統的な価値観であるのです。DVD版買おうかなと思っちゃいましたが、下宿先で一人で見てたんならボロボロ泣いてるかもしれませんね。それはともかく、動物ものが嫌いな自分が、これとか、以前には『犬を飼うということ』をなんで真剣に見てたのかと母になじられたのですが、思うに、犬の生死という深刻な問題に、いかにまじめに向き合っているかどうか、というところに、その違いがあるかもしれません。擬音を散らかすことで悪名高い日本テレビの某天才動物園なんかは、女子供と「女々しい」男の「かわいい」というコメント(私はなんの体面もなしに「かわいい」と口にする男が大嫌いなのです)を期待するような動物の映像を披露したかと思ったら、いかにもやらせ臭い死にかけの犬の「気持ち」を見せびらかす。それらは生と死という生命の二つの局面を取り上げているけれども、両者はまったく乖離しており、明らかに視聴者の歓心を買うために供されている。そういうのが私には耐えられないのでした。しかしながら、生と死は表裏一体の切り離せないものであり、時空間的な厚みがあり、生の光あるところには必ず死の影が差す、そういうものだと思うのです。そしてそうした要素を表現しうるのが、登場人物(と犬)の見せ方であったり、音楽だったりするわけです。『犬を飼うということ』はどちらかというと同時期に放送されていた『マルモのおきて』への反抗心から見ていた感が大きいのですが、ちらと目にした『いぬのえいが』にこれほどまでに惹かれたのは、そういうにおいを嗅ぎ取ったからなのでしょう。こういうにおいって、日本人こそがよく鼻が利くんじゃないかしら。それにしても、美香ちゃんの幼少期役の大橋のぞみちゃんが可愛かったと思います。(素)